福岡・九州のビールフリーペーパービール大好きドットコム

初版:2014/02/12
改訂:2014/02/21

ビールを楽しむに当たっての用語とその解説です。
まあ知らなくてももちろんビールは楽しめるんですが。
ボチボチ、増やしていければと思います。
材料や製法そして歴史を踏まえながらビール用語を解説していきまっす

主な原材料

麦芽

醸造酒であるビールは酵母が麦の糖分をアルコールにする。しかし麦そのもののデンプンだと発酵ができない(酵母が食べきれない)ので麦を麦芽にし、そこから糖化させる必要がある。

麦の種類
現在は主に大麦が使われる。大麦には二条大麦と六条大麦があるが、ビールには一般的にデンプン量の多い二条大麦が用いられる。またスタイルによってオーツ麦やエンマー麦、そして小麦も用いられる。
麦芽
麦は発芽することで、自身のデンプンを糖に変えるための下準備を行う。しかしそのままだと麦がどんどん成長するので、根を取り除いて焙煎を行う。その時の温度帯により色や香りの異なる「麦芽」が作られる。
アミラーゼ
麦のデンプンを糖化させるのに必要な酵素で、発芽することにより麦の内部で作られる。また、この時同時にタンパク質をアミノ酸に分解する「プロアスターゼ」という酵素も作られる。アミノ酸は発酵時に酵母の栄養源となるのだ。
麦芽の種類
ビールの様々な色の違いは主にこの麦芽の色の違いで決まる。
濃色のビールには濃色の麦芽が用いられるが、全て濃色麦芽というわけではなくベースとなる「ペールモルト(淡色麦芽)」に加えていく。
色が濃ゆくなるにつれ、発酵しにくくなる(高温の焙煎により糖分がなくなるので)のだが同時に焦げた風味などが持ち味のビールが仕上がる。
ベースのペールモルトにどれくらいの割合で濃色麦芽を混ぜるかでビールのキャラクターが大きく変わるのである。
麦芽のカラーチャート。一番左がベースになるペールモルト(淡色麦芽)

麦芽のカラーチャート。一番左がベースになるペールモルト(クリックで拡大)

ホップ

蔓状の雌雄異株の植物。ビールには雌株の「鞠花(まりはな)」と呼ばれる部分のみを使用する。その多彩な役割からドイツではビールのために生まれた「緑の黄金」とも呼ばれる。主な役割としての「殺菌」「苦味」「香り」の他に、麦汁の過剰なたんぱく質を沈殿・分離させ、ビールを清く澄ませたり、ビールの泡持ちをよくするなど。ドイツの「ハラタウ」やチェコの「ザーツ」種はあまりにも有名。12世紀頃からホップが本格的に使われるようになる前は「グルート」と呼ばれるいくつかのハーブを纏めた香味料が使われていた。

ハラタウ(ドイツ) from wikipedia

ハラタウ(ドイツ)
from wikipedia

ルプリン
ホップの中に沢山ある黄色い粒のこと。ここに苦味のもととなる成分(アルファ酸)や、香りの成分の精油が含まれている。ホップの種類によって含まれるアルファ酸の値が違うので目指すビールによってホップを使い分ける。
イソアルファ酸
ホップに含有されるアルファ酸が煮沸されることにより苦味成分のイソアルファ酸へ変質する。ビールの主な苦味成分。なお、ホップはそのままの形だと扱いづらいため、ペレットと呼ばれる状態で扱われることが多い。
主なホップの種類
麦汁にホップを添加するタイミングで大きく「ビタリング(苦味)」と「アロマ(香り)」に別れる。
これはホップの種類ではなく役割の名称だが、ビタリング向けのホップやアロマ向けのホップなどがある。
また発酵段階でホップを投入する「ドライホッピング」という技法があり、その年に採れたホップを生で投入する手法も人気。
タイプ特徴主な品種
ファインアロマホップ
ノーブルホップ
アロマよりは穏やかな香りをもち苦味も上品。ザーツ
テトナング
アロマホップアルファ酸値が少なめで主に香りづけに用いられるハラタウ
ペルレ
ビターホップアルファ酸値が多く主にビタリングに用いられるマグナム
ヘラクレス

酵母

穀物をアルコールに発酵させる主役。顕微鏡でないと確認できない微生物のため古代は発酵の仕組みが知られておらず、アルコール発酵は魔術のごとく見られていた。麦芽の中の糖分を食べ主にアルコールと炭酸ガスを排出する。現在のエールとラガーの大別はこの酵母の違いによるもの。

上面発酵酵母
発酵が終わり麦汁に浮かんでくる酵母を「上面発酵酵母(エール)」比較的高温(15~25度)で短期間(3~5日)で発酵を行う。温度が高いのでフルーティー香りが特徴的
下面発酵酵母
発酵が終わり麦汁の下に沈む種類を「下面発酵酵母(ラガー)」と呼ぶ。低温(10度前後)で長期間(7~10日間)で発酵を行う。すっきりとした味わいが特徴的
自然発酵酵母
特定の醸造所に住み着きの「自然酵母」を利用するビール(ベルギーのランビック)もある。発酵の仕組みが知れる前の、クラシックなスタイルに非常に近い。

人物

カール大帝
カール・デア・グローセ(独)またはチャールズ・ザ・グレート(英):フランク王国のカール大帝はビール好きとしても知られる。彼はローマ時代、ワインより低い酒とみなされていたビールを政治的策略を用い(統治先に修道院を作り、ビール作りをさせた)その地位を上げることに成功した。戦場では部下の兵とともに宴会を開き泥酔することもあったというが、いざ宮廷に入るとその立ち居振る舞いは見事なものであったという。
ヴィルヘルム4世
16世紀のバイエルン公:バイエルン公国で『ビール純粋令』を発布した人物。当時貴重な食物であった小麦をビールにされることを防ぎ、北ドイツに比して品質の劣ったバイエルンのビールの品質を高め、特定の宮廷醸造所にのみ小麦ビール醸造の許可を与えブランド化し莫大な利益を得、その後に勃発した30年戦争の戦費を購ったという恐るべき一石四鳥をやってのけた。
グロル
ヨーゼフ・グロル:バイエルンの醸造家。品質において劣っていたボヘミア(チェコ)のピルゼン市は品質の底上げを狙い市民醸造所を立ち上げた。その醸造所より招かれ、当地でラガービールの指導を行う。その際現在のメインストリームとなるスタイル、黄金色の「ピルスナー」を作り上げた。二日酔いのグロルが濃色麦芽を添加し忘れたとまことしやかに言われている。契約延長を望んでいたが満了と同時にお払い箱にされるなど不遇だが、当人の性格面は結構難ありだったらしい。
パスツール
ルイ・パスツール:フランスの生化学・細菌学者。ワクチンの予防接種や低温殺菌による腐敗防止を開発するなど「近代細菌学の開祖」とも言われる彼はビールに関しても功績が大きい。ビール(アルコール)の発酵が酵母によることを証明しその働きによって上面、下面発酵に分かれることを発見。また、上記低温殺菌による腐敗防止は牛乳、ワインそしてビールにも大きな福音となった。(低温殺菌法を彼の名をとってパストリゼーションと呼ぶ)
ハンセン
クリスチャン・ハンセン:デンマークのカールスバーグ研究所でビール酵母の純粋培養に成功した。それまでのビールは発酵が終わった麦汁の澱(酵母が残っている)を用い次のビールを醸造していた。この場合、ビール酵母以外の雑菌も含まれる場合もあり歩留まりが低かったと考えられる。しかし酵母を単一に培養しエールから上面発酵酵母を、ラガーから下面発酵酵母を単離させビールの香味を安定させることに成功した。
リンデ
カール・フォン・リンデ:バイエルン州、シュパーテン醸造所のガブリエル・ゼドルマイヤーの協力を得てアンモニア式冷凍機を開発し、1873年に同醸造所にその第1号機を設置。それまで冬期以外は難しかったラガービールを季節を問わず醸造できるようになった。
マイケル
マイケル・ジャクソン。イギリスのライターで現代ビール界の巨人。『ビアハンター』とも称される。世に埋れていたベルギービールの多様性を世界に広め、更にビールのスタイルをカテゴライズ。イギリスのリアルエールを守るCAMRA(The Campaign for Real Ale)の運動や、アメリカのマイクロブルワリー運動の創始者の一人でもある。

パスツールの低温殺菌法、ハンセンの酵母の純粋培養法、リンデの冷凍機発明はビール造りをそれまでの「経験と勘」の世界から近代化させた。現在この3つを「ビールの科学3大発明」とも呼ぶ。