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2014年1月26日
 福岡のクラフトビール事情

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第四章「現在の福岡のクラフトビアシーン ~クラフトビールの町へ~」

『Beer’s』閉店後の福岡はしばらく上記の2店ぐらいしかクラフトビール(特に国内のマイクロブルワリーの物)の樽を飲めるところがなかった。もちろん『The Hakata Harp』などのアイリッシュパブでは「ドラフトギネス」や「キルケニー」の樽ビールが飲めたし、樽に拘らなければ中洲の老舗『Cotton Fields』で300種類以上の海外のビールを愉しめた。また、同じ中洲にかつてあった『Van Beeru』では『Cotton Fields』より種類は少ないがやはり海外のクラフトビール(瓶)が多数あり、更に『杉能舎』の樽生ビールも提供されていた。だが、樽のクラフトビールを中心に出す新たな店の出現は2009年の7月まで待たなくてはならない。イギリスの『Green e King PLC』の輸入代理店をしていた『(有)エイボンドリンクス』が大名に『Three Kings British Pub』を開店した。当初飲めたクラフトビールは8種類で、もちろんイギリスのビールが中心だ(現在は日本のクラフトビールも割と飲めるらしい)。初めて訪れた時に驚いたのはその半分がハンドポンプで提供されるリアルエールだったことだ。『Three Kings British Pub』開店の前年、2008年のゴールデンウイークには福岡では久々のビアフェスである『福岡ジャーマンフェスト2008』も開催され、自分的にはこのあたりの時期から福岡のビール事情が好転している気配を感じていた。また少し時間が空くが、『The Craic and The Porter』から徒歩で約5分のところに位置する舞鶴で『Gastro Pub Ales』が2011年8月にオープンする。

ales

ales

この店は2005年平尾で開店した『British Pub Sei』の姉妹店で、現在世界のビール業界でトップを走っているブルワリーの一つであるスコットランドの『BrewDog』のビールが専用のタワーから注がれる。もちろん“福岡初”である。そして前述したように2012年の10月には別府の『Paddy』が高砂へ場所を変え、本格的な“クラフトビールパブ”に生まれかわった。10個の注ぎ口で構成されるマルチタップから国内のメーカーを中心に店主“マーシー”が厳選したクラフトビールが見事なローテーションで提供される。リアルエール用のハンドポンプや専用のタワーから注がれる『サッポロビール』の逸品「エーデル・ピルス」等があるので、樽で飲めるクラフトビールの数は10種類を超える。マルチタップは増設も可能と言うことなので、今後更に飲めるビールの種類が増えるだろう。2013年も新店が2店登場した。まずは6月大名に『Craft Beer Brim』が誕生する。オーナーはかつて今泉の『Irish Pub Leprechaun』で働いていた青年で、一度だけそのお店を訪れた自分を覚えていてくれた。ここは『Beer Paddy Fukuoka』同様マルチタップ(16ある)から常時10種類以上の国内のクラフトビールが提供される。明るい店内照明やソファーテーブル席があるなど一般的なビアパブのイメージとは少し異なり、初めての人や女性客も入りやすそうだ。そして一番新しいお店は東京渋谷に本店を構える『Goodbeer Faucets』の2号店『Goodbeer Faucets HAKATA』だ。11月に春吉にオープンしたこの店は、渋谷同様常時40種類のクラフトビールが揃っている(当然福岡では最多である)。

goodbeer fausets

Goodbeer Faucets

国内のみならず海外のクラフトビールも豊富にあり、また国内のメーカーに委託して製造しているオリジナルの“ハウスビール”もあり、こちらは比較的安価で提供されている。2014年も早速ビール関係のイベントや新店の情報が届いている。全国的に見ても今のクラフトビールのブームは一過性のものではないと思われるので、ここ福岡でも今後ますます盛り上がっていくことだろう。

第五章「福岡市以外の県内のクラフトビール事情」

近年のクラフトビール熱の上昇は当然福岡市やその周辺に限ったことではない。福岡第二の都市北九州の黒崎に2008年3月にオープンした『Public House Bravo!』は開店以来ちゃくちゃくと成長を遂げ、ビアバーとしては県内有数の集客力を誇る。

Bravo!

Public House Bravo!

常時飲める樽ビールは「エーデル・ピルス」・「琥珀ヱビス」・「ドラフトギネス」と多くはないが、毎週金曜日に“ゲストビール”としてベルギーやアメリカのレアなクラフトビールが繋がる。九州初上陸のものも多い。樽は少ないが瓶ビールの充実振りにはビールマニアも納得がいくだろう。また、「色々なビールに触れビールの素晴らしさを知ってもらう」というコンセプトの元に“ビール党の会”と銘打って年に3回ほど赤字覚悟の飲み会が開かれる。クラフトビール初心者やまだお店に来たことのない人も大歓迎の会で、出されるビールも入門編のようなビールからマニアックなものまで幅広い。興味のある人は一度参加してみるといいだろう。そして黒崎と言えば20年以上続く老舗のビアバー『Brasseri Daimaru』を忘れてはいけない。と言ってもここは今も昔も数多くのクラフトビールや珍しいビールを提供しているわけではない。ラインナップは『アサヒビール』が取り扱っているもののみで、レギュラーとして「熟撰」・「シュバルツ(黒生)」・「Bass Pale Ale」が樽で飲める。この店の特徴は昨今ほとんどみかけなくなった氷冷サーバーを使っていることだ。マスター曰く「このサーバーでないと完璧な状態でシュバルツを出せない」そうだ。名品「アサヒスタウト(瓶)」があるのも嬉しい。また毎月第4金曜日には「Bell-Vue Kriek」が登場し、このビールを求めて多数の客(特に女性客)が来店するとのこと。
北九州一の繁華街を持つ小倉にもビアバーがある。『Irish Pub Booties』の開店は2002年の8月で、県内のビアバーの中では比較的歴史がある店だ。

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Irish Pub Booties

「ドラフトギネス」や「キルケニー」を提供する割とオーソドックスなアイリッシュパブとして長年親しまれてきたが、近年は上記の『Public House Bravo!』の様に国産のクラフトビールをゲストビールとして週替わりで出している。また地理的に近い『門司港地ビール』は常時飲めるようだ。小倉には他にアメリカに15年間在住していたマイクさん(日本人です)が開いたニューヨークスタイルのアメリカンバー『Atmosphere from New York』や魚町商店街にあるユーロ酒場『隣区場』と言ったビアバーが近年開店している。『Atmosphere from New York』では約70種類のボトルビールと共に『門司港地ビール』の樽生が愉しめる。アメリカ仕込みのマイクさんの料理も絶品だ。『隣区場』のクラフトビールも主力は海外のボトルビールだが、こちらでは福岡で唯一ベルギーの『デュベル・モルトガット醸造所』の白ビール「Vedett Extra White」がレギュラーの樽ビールとして出されている。
その他の地域の事情についてはあまり詳しくないが、自分の知る限り2012年に赤間で『Ale House 53』、2013年に久留米で『BeerBar Cascade』と言うビアバーがオープンしている。どちらも未訪問なのでいずれは行ってみたい。

あとがき

“福岡のクラフトビール事情”と銘打っておきながら本特集では県内の小規模ビール醸造所については全くと言っていいほど触れていない事に気づくだろうが、いずれ自分あるいはマナブ氏が各醸造所の記事を個別に書く予定なので敢えて記事に含めなかった。
日本のクラフトビール情報を英語と日本語で提供しているフリーペーパー『Japan Beer Times』の2013年夏号に“Fukuoka”の特集記事が組まれた(*5)。こちらも過去の福岡のクラフトビール事情から現在の状況まで詳しく書かれている。両者の内容は若干異なり、特に上で触れた県内の小規模ビール醸造所の情報についても『Japan Beer Times』の記事では紹介されているので本特集と合わせて読むとより福岡のクラフトビール事情がわかるだろう。

福岡のクラフトビール熱はまだピークを迎えていない。この先どんどん状況は変化するだろう。今後また大きな変化があれば本記事の続編を書きたいと思う。

*5 http://japanbeertimes.com/2013/08/fukuoka/

Keita

書いた人=Keita
ビールと福岡ソフトバンクホークスをこよなく愛する福岡県民。
当サイトにおいては監修的な役割をしています。
時々記事も書くと思います。