書いた人 = マナブ
発行人兼暫定編集長です。
趣味はビールの他はジムで踊る(ZUMBA!)、料理、猫、ボーっとするなど。 最近はビール系のイベントとジムのダンスレッスンが被ったりすることが悩みというノーテンキさ。
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特集その19~ビールを「ちゃんと」注ごう!-
注ぎ方で味が変わる、のもビールの大きな特徴の一つ。
ビールは「作り手」「飲み手」そして「提供する=注ぎ手」いずれも欠かすことの出来ない大事な要素なのだ。
そのこだわりの一杯を探してみよう!
ビールの「注ぎ」
ピルスナーを例にとって改めて紹介しよう。要点としては3つ。
・最初に勢いよく注ぎ泡を作る
・その泡が落ち着く頃ゆっくりと泡を持ち上げる感じで注ぐ
・最後にまた勢いよく注ぎ、2度めの泡を作る。
これがいわゆる三度注ぎと言われるビールの注ぎ方だ。動画でも紹介しているので参照してみてほしい。
もちろん清潔でスタイルに見合ったグラスであったり、温度も重要だったりするのだが缶や瓶から直接ゴクゴク飲むのと比べて味の違いがはっきりおわかりいただけると思う。
すべてのスタイルでそうなのか?
しかしこれはあくまでピルスナーでの例である。
類似したラガー系統でもある程度通用できるであろう技術だが、全くスタイルが違うエール系統ではどうなるだろうか?
まずはなぜ3度注ぎで味わいが変わってきているのかを考えてみたい。
ビールの泡の正体
ビールを注ぐと泡が出る。当たり前のようだがほとんど発泡しないビールもある。その違いはなにか?
大きくは内包されている炭酸ガスの濃度とタンパク質が鍵になる。
泡の主成分である炭酸ガスは麦汁の発酵段階でも発生するが、缶や瓶にパッケージングされるときも充填される。
そのため3度注ぎでは最初に勢いよく注ぐときにこのガスを適度に逃し、最初の泡を作る。
よく「ビールはお腹いっぱいになるから・・・」と敬遠がちに語られるのは、この炭酸ガスを泡にすることなく缶や瓶から直接飲んだ場合特に顕著だ。本来泡となって抜かれるべきガスがお腹で膨らめばそりゃお腹いっぱいと錯覚するのも無理はない。
そしてこの「適度に泡」を作ることによって別の効果がある。それはホップの苦味成分は泡を持続させるための成分でもあり、つまりビールの泡を作りながら注げばビールそのものの苦味も当然減少する、のである。
実践してみた。
では実際に飲み比べてみたい。
苦いビールと言えば実験しやすいのはもちろんIPAだ。
同じ銘柄を同じ温度で同じグラスに注いで比較してみる。
片方は3度注ぎをして泡を作り、もう片方はゆっくり静かに泡が出ないように注いだ。
泡を立てて注いだ方はホップの苦味よりもむしろ麦芽の甘みを感じやすい。
またピルスナーと比較してヘッドリテクション(泡持ち)は弱め。
IPAの特徴の一つであるホップの苦味をストレートに味わいたいのであれば泡を作らずに注ぐのも良さそうだ。
「注ぎ方」は要素の一つ
ただし気をつけてほしいのはビールは注ぎ方「だけ」で味わいが変わるわけではない、という点。
繰り返すが、スタイルによってグラスや温度でも当然味わいが変わってくる。
例えばハイアルコールビールであれば、冷蔵庫から一旦出してある程度温度が上がってから注ぐ、グラスも違うスタイルのグラスを試してみる、あえて泡立てずに静かに注いでみる・・・・・。
など、より美味しい一杯のためならば色々と試して見る価値はあるだろう。
リアルエール
リアルエールをご存知だろうか。
詳しく説明しだすととてもコラムの域に入らないのだけど、ごく簡単にいえばカスクコンディションのビール、つまり(貯蔵用のタンクではなく)樽でコンディショニングされるビールを指す。
その詳細はイギリスのビール消費者団体(ちゃんとそういうのがある)CAMRAによって定義されており、
"リアルエールは、伝統的な原料(麦芽大麦、ホップ、水、酵母)から醸造され、提供される容器(訳注:樽のことね)内で二次発酵によって熟成され、外部からの二酸化炭素を使用せずに提供されるビール"
となっている。
要するに通常の(他のスタイルの)ビールのように炭酸ガスで押し出さずにハンドポンプや重力式で提供されるのが「本来の」エール、という訳だ。
重力式ってのはあれよ、木樽等にコックが付いていてヒネると中身が出てくるってやつね。
醸造段階から炭酸を抜きながら作られるため、ほとんど炭酸ガスを含有しておらずビールの旨みをダイレクトに味わえる。
したがって本来泡立ちも殆どないのだが、ハンドポンプにはスパークラーとよばれる「泡つけ器具」が取り付けられたりしている。
もし本来の味わいを楽しんでみたくて、(かつ店が混んでなければ)スパークラーを外してもらって注いでもらうのも良いだろう。
かつてイギリスではパブの主人がこの樽の中身のビールの発酵具合を見極めて提供するというまさに職人技が行われていたようだ。
過去形なのはこういった管理の煩雑さや産業化、低温ビールの台頭によりリアルエールが廃れていったから。
そして冒頭のCAMRAというのはまさに、現代においてそういったリアルエールを復刻させよう、という運動から始まった組織なのだ。(Campaign for Real Ale)