特集~ハイアルコールビールの深淵- 福岡・九州のビールフリーペーパービール大好きドットコム

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特集その18~ハイアルコールビールの深淵-

ビールのアルコール度数について考えたことがあるだろうか。
一般的にはさほど高度数の飲料とは捉えられていないと思われるビールだが、とんでもないハイアルコールビールがある。
その深淵を覗いてみよう。

ビールのアルコール度数って?

ビールのアルコール度数をご存知だろうか。
と聞くと「4~5%くらい?」と返答される方は未だに多い。が、ビールには様々なスタイル(種類)がある、ということはビールのアルコール度数も様々だ、ということになる。ちなみにビールの苦味を表すIBUという単位があるが、アルコール度数についてはABV(=Alcohol By Volume)で表すので以下そのように表記していく。

世界一のハイアルコールビール

結論から言うと2020年初頭現在、最強のビールはスコットランド、ブルーマイスターの「Snake Venom」というビール。
ABVは実に67.5%という蒸留酒でもなかなかお目にかかれない度数を誇る。

-----一昔前-----現在ほどクラフトビール、が世に広まる前ということだが、ハイアルコールなビールはせいぜい10%前後のものであった。
スタイルとしてはバーレイワイン、インペリアルスタウト、ベルジャントリペル、スコッチエールと呼ばれるビールだ。
ベルギーやイギリスの伝統的なスタイルの一つで、いずれもエール系ではある。
しかし長らくギネスブックにも掲載されるほどABVが高いラガービールとして「サミクラウス」という銘柄もある。ABVは14%。
現在でも下面発酵ビールとしては最強クラスの度数で、一般的なピルスナーと比べると3倍近い度数でもあり、ハイアルコールビールと呼ぶのに十分なビールだ。

そして競争へ

そんな中2005年に登場したのが米国サミュエル・アダムスの「ユートピア」。ABVは24%と一気にレコードを塗り替える驚異的な度数であった。
そして、当時新進気鋭のブルワリーであったBrewDogが2009年に「戦術核ペンギン」といういかにも同社らしいネーミングのビールを出して最強度数に名乗りを上げてきた。このビールがABV32%。
そうするとドイツのショルシブロイが「ショルシボック40(ABV40%)」を発表。

そうなると黙っちゃいないのがBrewDog、売られた喧嘩は買うぜ!と言わんばかりに即座に「シンク ザ ビスマルク!(ABV41%)」で巻き返す。
「ビスマルク」は第二次世界大戦中のドイツ海軍の戦艦の名前。(鉄血宰相の異名を持つオットー・フォン・ビスマルクから採られた)その戦艦ビスマルクを大戦中にイギリスが沈めたのをなぞらたわけである。
平たく言えば挑発してきたわけだが、それに乗ったショルシブロイは「ショルシブロイ43(ABV43%)」で「ビスマルク」が1%上回ったところを、2%上回るという反撃。こまかいね。
いい加減にしびれを切らしたのかここでBrewDogが出したのが「End of Histry」。ABVはここで一気に55%へ跳ね上がった。
このビール、わずか11本の限定生産でそのうちの7本がオコジョ、4本がリスの剥製というけっこう趣味の悪い瓶だった。(気になる方は各自検索して探してみてほしい。)
しかしやはりショシブロイはショルシボック57(ABV57%)というあまりにもそのままのビールで対抗。
更には「End of Histry」で終わった歴史をオランダのKoelschip Breweryが「Start The Future(ABV60%)」でよせばいいのに歴史を再スタート。
ここで脱落したBrewDogに変わって同じくスコットランドのブリューマイスターが「アルマゲドン(ABV65%)」で人類を滅亡させその歴史に幕を閉じ・・・たかに思えたが、同じブリューマイスターは「Snake Venom(ABV67%)」を発表。
いまのとこ、こちらが世界最高の度数のビールとなっている。
ちなみにアルマゲドンを飲んだビール好きが「まだ弱い」とかブルワーに言ったらしい。口は災いの元である。

ビールなのに蒸留!?

こういったハイアルコールビール、もともとはアイスボックと呼ばれるスタイルのビールがベースにあって、ビールを凍結させ水分を取り除き残ったアルコール度数を高めていく、というものだ。
もともと強いドッペルボックビールを凍らせただけあってアイスボックは14%程度のABVがある。
そして水分を除いていくということは、当然その分容量は減っていくわけでつまりこの手のビールを作るには多量にビールを必要とするのだ。(なので値段が高くなる)
それはまあ、ともかくとして問題なのはこの「凍らせて水分を取り除く」という工程。
蒸留酒は水の沸点=100℃、アルコールの沸点=78℃という沸点の差を利用し、水が蒸発する前に蒸発したアルコールを集めるものだが要するにその逆だ。
ちなみに米国では凍結蒸留として蒸留と同じカテゴリに分類されるという。(のでブルワリーが「醸造」することはできない)
じゃあビールじゃないじゃん!となりそうなところだが・・・ビールとは作った人が「ビール」だといえばそれは誰がなんと言おうが「ビール」なのだ。ただしそれが美味しいかどうかは別の話だ。

飲んでみた

といってもこれらのビールはなんといっても「高い」「入手困難」なものが多い。

コラムにも書いたが、その製法上通常の度数のビールの数倍以上のビールを濃縮していくものであり、特にエンドオブヒストリーなど11本限定で定価10万円弱、プレミアが付いた今は見当もつかない。(未開封のものがあるのか?)
おなじBrewDogであれば戦術核ペンギンはまだ比較的入手しやすいがそれでも1本ン千円は覚悟しなければならない。
現在最強のSnake Venomもイギリスに赴いて、それもネット通販でようやく手に入るというシロモノで、しかもその上一度に1本しか購入できない。
中の人は今まで戦術核ペンギンのみ飲んでみたことがあったが、今回幸いにもSnakeVenomも飲む機会があった。
味?なんでもバランスが肝心だ!

書いた人 = マナブ
発行人兼暫定編集長です。
趣味はビールの他はジムで踊る(ZUMBA!)、料理、猫、ボーっとするなど。 最近はビール系のイベントとジムのダンスレッスンが被ったりすることが悩みというノーテンキさ。
好きなスタイルは普段飲みはIPA。ジックリ飲む時はインペリアルスタウトとかもスキ。 このサイトはwordpressで構築しています。レスポンシブにも対応。
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